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リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第2話
- 1 :名無し募集中。。。:2008/04/19(土) 15:44:02.94 0
- 前スレ
リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ
http://ex24.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1208090669/
- 168 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 22:41:06.46 0
- >>167
待ってたよ
シリアスも大好きさ!
さあ来い!
- 169 :名無し募集中。。。 :2008/04/20(日) 22:42:59.18 0
- 从*・ 。.・)<キターーーーーーーーーーーー!!!!!
- 170 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 22:44:30.16 0
- >>167
楽しみ
- 171 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 22:45:51.87 0
- 「もう大丈夫だよ」
そう言ってそっと地面に下ろしてやると、薄茶色のノラ猫はあっという間に走り去っ
た。
つい先ほどまで引きずっていた足をしっかり踏みしめながら。
さゆみは猫の姿が消えた後もしばらくそちらを眺めて立ち尽くていた。
ふと、昔のことを思い出して。
ヒーリング・・・あらゆる傷を治す力。
さゆみには物心ついたときからその力が備わっていた。
様々な能力の中にあって最も優しい癒しのチカラ。
だけど。
―普通ではない―
ただそれだけで、さゆみは迫害されてきた。
両親からさえも。
いや、両親はきっと迫害したなどとは思っていないだろう。
ひどいことを言われたり家を追われたわけではない。
だが、さゆみにとってはある意味それ以上に辛い日々だった。
- 172 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 22:46:30.01 0
- きっかけはさゆみが幼稚園に入ってすぐくらいのある日。
階段から落ちて足の骨を折り、痛みにうめく父に対して、さゆみは初めてチカラを行
使した。
幼い頃にありがちな褒めてもらいたいが故の行為ではなく、痛がる父を助けてあげた
いという純粋な思いから。
そしてさゆみにとってそれは当然の行為であった。
これほどの大怪我の治癒は初めてだったが、さゆみの思いが能力を強く引き出し、あ
っという間に折れた骨は元通りになった。
さゆみは父に「もう痛くない?」と訊ねた。
以前、近所のマイちゃんの擦り傷を治したときに訊いたように。
「うん、大丈夫になった」・・・という笑顔の返事が、マイちゃん同様に父からも返ってく
ると疑わなかった。
だが、さゆみが目にしたのは、父と、救急車を呼ぶための電話から帰ってきた母の怯
えたような表情だった。
- 173 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 22:47:04.94 0
- そしてその日以来、両親がさゆみの目を見て話すことはなくなった。
表立って虐待されたわけではないし、両親にもそのつもりはなかっただろう。
むしろ両親はさゆみのことを叱ったりしなくなった。
逆に、家の中でばったり行き合ったときなどは息を呑む様子がありありと分かった。
―パパとママは自分のことを怖れている
そう気付いたときの絶望的な気持ちは今でもはっきりと覚えている。
それは同時に、自分の持つチカラが普通ではないのだということ、だから他の人の前
で使ってはいけないのだということを理解した瞬間でもあった。
・・・だが、理解することとそれを貫き通すことは別問題である。
さゆみにとって、目の前で苦しむ者をそのままにすることは耐えがたかった。
自分にはその人を救うことができる。
苦しみを取り除いてあげることができる。
それが分かっていながら黙って通り過ぎることはどうしてもできなかった。
そしてその結果、癒した傷の分だけさゆみの心は傷を負っていくことになる。
優しいチカラ。
優しい気持ち。
皮肉にも2つの優しさがその持ち主の心を暗闇へと誘って行った。
さゆは誰からも必要とされていない。
そしてきっとこれからもずっと誰にも必要とされない。
そんな思いに心を支配され、さゆみは家でも学校でも他のどんな場所でも独りだった
。
- 174 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 22:47:38.37 0
- 決定的だったのはあの日。
体調が悪く、小学校を早退したさゆみは、家に入ったときに母親がどこかに電話している声を聞いた。
内容は思い出せない。
いや、思い出したくない。
気がつくとさゆみはランドセルのまま家を飛び出していた。
さゆなんてもういなくなった方がいいんだ。
だって生きてる意味なんてないもん。
死のう、このまま。
あてもなくフラフラと彷徨ううち、唐突にそんな衝動が突き上げる。
気がつくとどこかの屋上に立っていた。
自分がどうしてその場所を“死に場所”に選んだのかは分からなかった。
でも・・・今なら分かる気がする。
- 175 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 22:48:05.06 0
- 「何してんの?そんな思いつめた顔してぼーっと立っちゃって」
そのとき背後から声が聞こえ、過去に飛んでいたさゆみの意識が引き戻される。
ゆっくり振り返ると、そこにはいつものように笑う絵里の姿があった。
あのとき・・・
病院の屋上から飛び降りようと思っていたさゆみに声をかけてきたときと変わらない笑顔の絵里の姿が。
「何してんのじゃないよ。また30分も遅刻だよ」
「ごめ〜ん。ほんっとごめん」
たいして反省した様子もない絵里のその謝罪をいつものように聞きながら、さゆみは再び過去に思いを馳せた。
あの日あの場所で絵里と出会い、さゆみの心は救われた。
自分を必要としてくれる存在、そして自分にとってかけがえのない存在。
周囲の“迫害”は変わらなかったが、「絵里がいる」と思うだけでさゆみの心が暗闇に引き込まれることはもうなかった。
“死に場所”にあの病院を選んだのはきっと偶然じゃない。
さゆみはそう思う。
正確に言えば、“生きるための場所”を求めて自分はあそこに立ったのだと。
そしておそらくは絵里もそうだ。
あんな風にヘラヘラと笑っているが、その心にはさゆみのものなど比べ物にならないほどの闇を抱えていたはずだ。
絵里も“死に場所”・・・ひいては“生きるための場所”を探してあそこに立ったのかもしれない。
助けを求めて叫ぶ2人の心が共鳴し合い、あの日あの場所に2人を誘ったのではないだろうか。
- 176 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 22:48:52.34 0
- 自分の存在が絵里にとってどれだけの救いになっているかは分からない。
だけど、これだけは確かだ。
自分にだって生きていく意味はあるのだということは。
今では絵里だけでなく、たくさんの仲間が温かく囲んでくれている。
生きててよかった。
そう思える今がとても幸せだ。
「ありがとう、絵里」
思わずそう呟いたさゆみに、絵里はしばし目をパチパチさせていたが、やがて照れたように笑うと言った。
「こっちこそありがとう、さゆ」
「にゃあ」
突然の頭上からの声に2人が振り返ると、さっきの薄茶色の猫が塀の上からさゆみを見ていた。
まるでありがとうを言うかのように。
- 177 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 22:49:26.48 0
- 以上です
ごめんなさい前半コピー&ペーストをミスりました・・・
- 178 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 22:54:35.75 0
- >>177
いい話だよ乙
さゆの優しさが伝わってくるしカメとのつながりも伝わるしウルッときた
- 179 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 22:55:43.39 0
- >>177
乙です
物語のベホマズン・・・確かに受けとめましたよ
- 180 :名無し募集中。。。 :2008/04/20(日) 22:56:08.41 0
- >>177
乙です
どんまい
しゃゆぅうううううううううううううううううううううううううううう
- 181 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 22:57:45.69 0
- >>177
ええ話や・・・。。・゚・(ノД`)・゚・。
- 182 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 23:00:49.26 0
- ありがとう
予告して書くのはいらんプレッシャーかかるw
ご期待に添えたかは分からないけどとりあえずつなぎとして書かせてもらいました
- 183 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 23:02:34.00 0
- >>154
フルあがってるよ
http://jp.youtube.com/watch?v=oVjn5GZVbxQ
- 184 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 23:06:25.66 0
- 30分遅刻とか、タイムリーな小ネタがいい
- 185 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 23:10:41.72 0
- >>183
おーフルで見るのは初めてだわ
- 186 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 23:15:39.03 0
- 歌詞・・・このスレ的には邪魔だなw
- 187 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 23:25:03.56 0
- 年上によく見られる
ttp://tv2ch.net/3/jlab-tv/s/61753.jpg
- 188 :名無し募集中。。。:2008/04/20(日) 23:36:47.27 0
- これ1回見ればもういいな
オリジナルとレッスンスタジオがやっぱ飽きない
- 189 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 00:22:01.02 0
- Night Scene Ver.はこれまでのClose-up Ver.みたいなもんなのか
ロケ映像のみでAnother Ver.みたいなストーリー性を持たせて欲しかったけど仕方ない
- 190 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 00:22:38.57 0
- むしろメイキング映像の方がキャプすれば使えそうだ
- 191 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 00:27:23.08 0
- http://toromoni.mine.nu/up/files/data/17/toro17684.jpg
なめとったら痛い目あうっちゃ
- 192 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 00:57:01.76 0
- 光井戦闘編執筆中・・・
もう遅いし明日の方が良いのかな?
- 193 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 00:59:18.31 0
- 楽しみ
でも自分のペースでやってください
- 194 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:00:16.23 0
- 今夜
読みたぁい
- 195 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:01:27.34 0
- http://www.youtube.com/watch?v=E9hUVr5bj9c
- 196 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:04:29.94 0
- 光井戦闘編すんごい長いんだよな・・・
読んでる人が飽きるかも
もうちょっとで書き終わる
- 197 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:06:44.58 0
- 予知能力の光井かな?
どんな風になるのか楽しみです
- 198 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:08:52.27 0
- >>195
スタジオレッスンのメイキングもあったのか
- 199 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:10:42.76 0
- 午後十時。郊外の駅には時刻表の合間という事もあり、人影は殆ど見えなかった。
光井はそんな中、携帯電話を弄くりながら立っている。
「あかんなあ。図書館寄ったらエライ遅くなってしもた。」
光井は誰に言うとも無く一人呟く。
「高橋さん、心配しとるやろなあ・・・一応メールだけは入れといたけど。」
二度目の呟きをもらした後、光井は何とはなしにホームを見渡す。
ホームには電車を待っているサラリーマンらしき男が一人、OL風の女が一人いるだけだ。
次の電車が来るまでは20分近くある。
光井は立ち上がると、自動販売機に向かう。
きっかり150円入れてお茶のボタンを押す。
- 200 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:10:50.93 0
- >>196
恐れないで・・・
勇気を持って投下して
その勇気にみんな共鳴するの
- 201 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:13:01.63 0
- ガコン。機械的な音と共にペットボトルが落下してくる。
光井はそれを拾おうとしゃがんだ瞬間、
――――――!!!!――――――
脳内にイメージが浮かぶ。
落下する蛍光灯
血まみれのサラリーマン
駆けつける駅員
- 202 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:16:03.13 0
- 光井の能力(予知)ではこういう事故も時々ではあるが感知する。
(このままやったら大惨事や・・・そしたら・・・)
光井はサラリーマンのほうを向くと、買ったばかりのお茶を転がす。
「スイマセ〜ン。取ってもらえます?」
サラリーマンに声を掛け、意識を自分側に向けさせた。
足元に何かぶつかる感触を覚えたその男は、光井の方を向き、ペットボトルを掲げる。
「ゴメンなさい。うっかりして・・・」
光井は男にそう声を掛けると、男に手を振った。
男は光井の方に走り、ペットボトルを渡す。
(これでこの人は助かるはずや・・・無精者と思われるやろけど、まあええか。)
それは光井が能力のせいで迫害されつつも「助けたい」と思う心から生まれた処世術でもあった。
- 203 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:17:27.33 0
- 5分後。
ホームにはあいかわらず3人しか居ない。
その場の空気も、何もかもが5分前と変わらなかった。
(おかしいなあ・・・蛍光灯落ちてくるはずなんやけど・・・)
光井は自分のイメージが実現しない事に違和感を抱いていた。
今まで、自分が見たイメージは全て実現していた。
光井の行動によって結果的に惨事を免れた事もあるが、事態そのものが起きないというのは初めてだ。
(まあ、あそこにおったら安全やし大丈夫やろ。)
光井は不安を取り払いつつ、前向きに考えるようにした。
- 204 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:18:46.33 0
- 「すごいねー!」
突如掛けられた声に光井はそれが自分に掛けられたものだと理解するのに数秒を要した。
気がつくとホームに居たOLが自分の目の前に立っていた。
「いやー!すごいよ!」
「何がですか?」
「だってさ、あの男死ぬの分かったんでしょ!?」
「!」
「お、その顔は図星って顔だね。」
「・・・」
「組織の報告はやっぱ信用できるね!」
光井の顔が青ざめる。
敵だ!あのサラリーマンを殺そうとしたのはこの女だったんだ!
光井の体は、頭が事態を把握すると同時に立ち上がっていた。
見れば女の方はそう大きくない。いや、寧ろ小さい方か。
「リゾナントパープルってのがどれ位のものか、オイラさあ、チョット興味あったんだけどね〜!」
相手の女は喋り続けた。場に似つかわしくない陽気さで。
「まあ、いいや。能力は確認できたし。」
次の瞬間、光井が座っていたベンチは爆発音と共に消え去った。
「殺しちゃおうか。」
- 205 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:21:15.65 0
- あれ?リーダー?みっつぃーは?」
喫茶「リゾナント」閉店後。店内には腹ごしらえをしようと他のメンバーが集まっていた。
「図書館寄ってくるから遅くなるってさ。試験が近いんだって。」
「やっぱり愛佳は偉いっちゃね〜。誰かさんと同学年とは思えんけん。」
「誰かさんて誰ですか!」
久住が口の中にグラタンを頬張りながら田中を睨む。
「その顔は分かってるんじゃないの〜?」
「ムキー!小春だって勉強します!」
「小春、ご飯食べながら口空けない。汚いよ。」
新垣の注意と同時に道重が時計に目をやる。
「それにしては遅いと思うの。」
「そういえばさ、ウチらって誰かがピンチになった時って、いつも愛佳に教えてもらうやん。」
田中がふと不安そうな声を上げる。
メンバーがそれぞれ単独行動時に何かハプニングがあったとしても、
光井の予知能力によって窮地に陥る前に救援に駆けつける事ができた。
「愛佳自身が単独で襲われたらヤバイんやなかと?」
「・・・」
全員の沈黙。
それが数秒続いた後、高橋が急いで立ち上がる。
「誰か一緒に来て!」
- 206 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:24:15.48 0
- 「すご〜い!こんだけ攻撃して無傷ってすごいよ!」
この女が「すごい」を言うのはもう何度目だろうか。
OL風の女・・・いや、ダークネスの手先は手放しでほめる。但しその言い方にはどこか優越感が感じられる。
まるで、自分は絶対不利な状況にならない、とも言わんばかりに。
「んじゃ、もういっちょ。」
女からエネルギー弾が放たれる。その弾は真っ直ぐ光井に向かってくる。
――――――右!――――――
とっさに光井は体を右に逸らす。
気弾は光井の左頬をかすめ、後ろの自動販売機に直撃する。
時刻に相応しくない爆音が背後で聞こえる。
「すごいねえ!オイラがどんなに攻撃しても全部読まれちゃうんだもん!」
「愛佳の能力を甘く見んといてや!」
田中やジュンジュン、リンリンの様な戦闘能力の無い光井はその能力を生かして、戦闘では回避に回ることが多い。
相手の次の攻撃イメージが見えるのだ。
それが分かれば回避も難しくは無い。
ただ、回避だけでは限界がある。
事実、光井の右頬や左足首には回避しきれず着弾の後が残っている。
「でもさ〜。オイラ達もある程度能力はあるんだよね〜。」
女は再度エネルギー弾を掲げると光井に放り投げるように放った。
- 207 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:26:57.10 0
- (この弾は・・・)
(・・・!!!)
(イメージが湧かない!?)
(予知が・・・出来ない!)
事態の理解よりも前に、光井はあばらに衝撃を感じた。
「・・・ッツ〜〜〜〜!!」
「そろそろ効いてきたかな。光井さん、予知できないでしょ?」
女は半笑いを浮かべて光井の方を向く。
(何でや・・・一切のイメージが浮かばんかった・・・ありえへん・・・)
「イメージが浮かばないのは当然。」
女は心を見透かしたように話す。
「今はアナタの能力が一切使えないからね〜」
「使えない・・・」
「そ。オイラの能力がこれ。『他人の能力の阻害』」
(能力を・・・封じられた・・・)
光井は愕然とした。唯一の武器である予知能力。それを封じられたら、ただの人間と変わりなくなってしまう。
ダークネスと対峙している今の状況では絶望的だ。
勝つ事はおろか、逃げる事もできない。
「じゃあ、フィナーレと参りましょう!」
- 208 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:27:39.80 0
- 光井はすでにボロボロの状況だった。
赤いネクタイは既に結び目を残すのみとなり、セーターもあちこちが破けている。
「キャハハハ!もうダメだよね〜!あきらめなよ!」
ダークネスの女は嬉しそうに光井を見下す。
光井は足を引きずりながら、少しずつ距離を開けていく。
相手には背を向けているだけに向こうとしては格好の的だ。
「あれ?逃げるの?リゾナントパープルともあろう人が。いやいやいや、有り得ないから!」
女の優越感たっぷりの声を背に、光井は少しずつ距離を離す。
「みっともないよ〜!潔く死んじゃえって!」
声と同時に女がエネルギー弾を放つ。
それは正確に光井の背中に命中する。
「〜〜〜ッツ〜〜〜!!!」
肉の焦げる嫌な臭いが光井の鼻をつく。
声にならない声を上げながら光井はそれでも後ずさる。
(もう少しや・・・あと少しだけ頑張るんや・・・)
- 209 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:28:15.69 0
- いくばくかの距離を動いた後、光井は振り返った。
「アタシはもうコレまでや・・・どうせなら一思いに殺せ!」
ダークネスの女は多少ながら驚愕の表情を浮かべたが、それはすぐに勝ち誇った表情に変わった。
「ついに諦めた?まあその方が良いよね。いや〜、オイラもココまで粘ると思わなかったんだけどね〜。ホントすごいよ。」
何十回目かの「すごい」を聞きながら、光井は片膝を付いた。
「オイラもリゾンナンターの一員を殺したとなれば昇格だな〜。ダークネスオリメンとして認めてもらえるかも!」
(なんやねん・・・オリメンとか・・・)
ダークネスの女は既に巨大なエネルギー弾を掲げている。
これまでに見た事の無いような巨大な弾だ。
食らえば光井も一たまりもないだろう。
「じゃあね!」
女が気弾を投げる瞬間
- 210 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:29:56.46 0
- ガシャーン!
誰もが予想している結果と異なる音と共に蛍光灯がダークネスの上から降ってきた。
その蛍光灯は寸分違わず、女の胸を貫いていた。
「・・・なん・・・で・・・」
女は口から血を吐きながら今までに無い苦悶の表情を見せる。光井は息を切らしながら答える。
「アタシの・・・勝ちやな・・・」
「たまたま・・・蛍光灯・・・が・・・落ち・・・たか・・ら」
「偶然とは違う・・・あのサラリーマンの蛍光灯が落ちるイメージは消えへんかったからな。」
「予・・・知能・・・力・・・消えてた・・・はず・・・何で・・・覚えて・・・いら・・・れる」
「愛佳の記憶力を甘く見んといてや!」
光井は唇に笑みを浮かべながら言い放った。
そこで光井の記憶は途切れる。
- 211 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:31:40.81 0
- 目が覚めるとベットの上だった。
場所は見慣れた喫茶「リゾナント」の部屋。
目を開けると、いつものメンバーが自分の顔を覗き込んでいる。
「目、覚めた!」
「良かった〜。」
「なかなか目ぇ覚まさんけん、心配したっちゃよ。」
光井は上半身を持ち上げる。まだ体に痛みが残る。
それが昨晩の戦闘の激しさを語っていた。
「駅着いたらさ〜みっつぃーが一人で倒れてるんだもん。」
「心配したの。」
光井は高橋の淹れてくれたコーヒーを飲みながら一息ついて口をあけた。
「倒れてたのはアタシだけですか?」
相手は死んだと思ってた。いや、生きていられるはずが無い。
「うん・・・みっつぃーだけ・・・」
高橋はばつの悪そうに答える。
「そうですか・・・」
光井は俯いたままだ。それは他のメンバーにも相手が逃げきった事を知らせる十分な情報源だった。
部屋の中に嫌な緊張感が走る。
次は自分が狙われるかもしれない・・・
どんなヤツが来るんだろう・・・
――――戦士たちに休息は無い――――
- 212 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:32:49.82 0
- 終わりです・・・
なんかもうgdgdで申し訳ないです
小説書いたの初めてだけどこんなに難しいと思わなかった
ココに限らず小説系のスレの作者を尊敬するわ
- 213 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:33:29.49 0
- 長編乙
- 214 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:35:30.15 0
- >>212
乙!
予知で闘うってのがイイね!
- 215 :名無し募集中。。。 :2008/04/21(月) 01:35:58.83 0
- 矢口のワルっぷりがウマいっすねー
- 216 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:36:36.68 0
- >>212
乙です
まずはふざけんなと言いたい
寝損ねたじゃないか明日早いのに
その上書いたの初めて?
改めてふざけんなと言いたい
才能が羨ましい
すごくよくできてた
展開といいテンポといい台詞回しといい
小ネタもはさむ余裕すらあるとか・・・
すごいね
みっつぃーが若干今までとキャラ違うけどねw
- 217 :名無し募集中。。。 :2008/04/21(月) 01:36:48.13 0
- >>212
おつかれいな
矢口は相変わらずオリメンになりたがりだな
- 218 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:38:21.54 0
- いいねえええ初めてとは思えない
この言葉を褒め言葉として使うことになるとは
矢口UZEEEEEEEEEEEEEEEEEE
- 219 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:39:12.92 0
- 敵役として画になるよな矢口w
- 220 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:40:08.88 0
- 光井と矢口は歌ドキで共演してるしイメージが湧いたなぁ
小ネタのセレクトがいいね
- 221 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:41:24.88 0
- 記憶力まで絡めてくるとはおそれいったよ
- 222 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:42:20.48 O
- 乙です
読んでてハラハラした
そして光井かっこイイ!
- 223 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:43:20.47 0
- 作者が一言も矢口って書いてないのに矢口って断言できるな
- 224 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:43:46.81 0
- (なんやねん・・・オリメンとか・・・)
がツボに入ったw
- 225 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:46:24.84 0
- 戦闘シーンはリゾナントブルーのInstrumentalを聴きながら読むと気分が盛り上がるよ
- 226 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:48:28.26 0
- じゃ俺も初めて書いてやるよ
田中「腹減ったなー」
道重「飯でも食いにいくか」
敵「おい金出せコラ」
亀井「金なんかねーよ」
敵「やんのかコラ」
高橋「やってやろうじゃねえかコラ」
敵「コラコラ言うなコラ」
ジュンリン「コーラ飲みたいアル」
- 227 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:50:59.27 0
- ありがとう心置きなく寝れる
- 228 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 01:56:55.37 0
- 矢口のイメージ画像うpして
- 229 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 03:18:44.26 O
- おやすみリゾナンター
- 230 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 06:55:32.22 0
- 一人の朝
- 231 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 08:22:42.88 O
- 数えて眠る
- 232 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 09:26:48.42 0
- >>228
(〜^◇^)
- 233 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 10:35:23.92 0
- >>226
コラコラ問答キターーーーーーー
- 234 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 12:04:27.75 0
- 和歌山電鉄・三毛ネコ駅長「たま」に駅長室できました!
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080421-00000000-yom-soci
うちのボスはちゃんと司令官室もらえてるのかな
- 235 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 12:18:46.73 0
- アジトは昔日テレでやってた「FiVE」のイメージ
MOON CHILDのESCAPEが主題歌だったやつ
もしくはリアルシスターズ
- 236 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 12:31:14.78 0
- 戦闘編は書くの難しいね
みんなうまいな
腕のなさかどうしてもどこか安っぽくなってしまう・・・
- 237 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 12:42:49.27 0
- >>228
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/17/toro17786.jpg
「オイラもリゾンナンターの一員を殺したとなれば昇格だな〜。ダークネスオリメンとして認めてもらえるかも!」
- 238 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 12:51:30.86 O
- >>237
矢口うぜぇw
- 239 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 12:55:15.62 O
- >>236
同意だわ
バトルのカッコ良さとメンバーの背景の深さを同居させる職人技は凄いわ
あと小ネタをはさむセンスとか最高
自分の読み返すとその辺が薄いんだよねーorz
- 240 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 13:36:53.87 0
- >>237
ロードオブザリングのゴラムみたいだなw
- 241 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 15:32:41.00 O
- 元ネタ、ヒーローズなのか
- 242 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 16:05:59.42 0
- 話を遮るようで悪いけど
ダークネスの他メンバーより地味だしかなり昔のやつだが
ドクターマルシェのイメージ画像
さすがに>>84はあれだと思ってw
おせっかいだったらスマン
http://toromoni.mine.nu/haroga/files/data/hellogirls13084.jpg
- 243 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 17:10:37.14 0
- リゾナントせよ
- 244 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 17:26:09.18 O
- >>242
こえーw
やっかいなもの作ってそうだw
- 245 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 18:01:39.52 0
- >>242
これ「剃毛しまーす」のやつだ
- 246 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 18:03:16.74 0
- >>242
これはグッジョブだ
こっちならシリアスモードでもイメージが沸くw
- 247 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 18:04:04.03 0
- >>242
いいじゃんこれw
- 248 :242です:2008/04/21(月) 18:38:25.14 0
- よかった、反応がいまいちだったらどうしようかと思ってたけどw
職人さん大変だと思うがファイトです。
- 249 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 18:57:13.44 0
- みっつぃーバトルに触発されて小春バトルを・・・書き始めたはいいのですが
シリアスに描くつもりがすっかりコメディーチックな流れになりつつあります
どうしてこんな展開になったのか自分でもわかりません
上げても怒らないでね
- 250 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 19:19:38.62 O
- 「どうしてそんな展開になったか検証して組織に報告したいの。
レポートがまとまったらすぐにあげて…」
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/17/toro17101.jpg
- 251 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 19:33:06.74 O
- 俺は逆にコメディ書きたくてもシリアル&暗い話になる
- 252 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 19:35:14.31 0
- サクサクしてていいじゃないか
- 253 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 19:44:27.14 0
- ちゃんと短編でコメディ書ける人は凄いと思う
設定上どうしてもシリアスになるから息抜きにもなるしね
- 254 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 20:01:34.63 0
- 一応できました
・・・コメディというにもシリアスというにも中途半端ですが
ざっとチェックののちに上げますのでお手柔らかに
戦闘編はほんと難しい
- 255 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 20:10:53.07 0
- 「お疲れ様でした〜。ありがとうございました〜。失礼しま〜す」
満面の“営業スマイル”を振りまきながら、久住小春は撮影スタジオを出た。
今日はCM撮影。
めずらしく時間がおすこともなく、撮影は今しがた無事に終わったところだった。
「思ったより早く着けそうかな」
着替えを済ませ、撮影スタジオが入ったビルのエレベーターの中で小春はそうつぶやいた。
この後、“仲間”との定期集会がある。
・・・といっても、何もない日でも集まっているのが常ではあるのだが。
エレベーターが1階に着き、ドアが開く。
そこには、今日のCMの広告主である企業の社長が立っていた。
小春のファンであるらしい社長は、その必要もないのにCM撮影を見学に来ただけでなく、わざわざ見送りまでしてくれるらしい。
「あ、今日は本当にありがとうございました。またよろしくお願いします☆」
瞬時に営業スマイルに切り替え、小春は社長に微笑みかける。
「よかった。かわいかった。最高だった」
延々同じような台詞を繰り返す社長に内心うんざりしながらも、小春はにこやかに話に付き合う。
俗物ではあるけれど、この男などまだかわいいものだ。
世の中の多くの人間が、その善人ぶった仮面の下に何を隠しているかを小春は嫌というほどに知っていた。
幼い頃から持っている常人にはない能力によって。
- 256 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 20:11:28.52 0
- やがて、ようやく社長から解放された小春は最後まで営業スマイルを貫きつつビルの外に出た。
「・・・重いんだけど、これ」
記念品だと言って手渡された、今日の撮影で使った小道具をもてあましながら小春は呟く。
その小道具――強化合金製(という設定)のヨーヨーは、リアルさを出すためかそれなりの重さをもたせてある。
今日のCMの内容は、かつて人気を博したらしい某ドラマのパロディだった。
「こんなもの振り回して戦うなんてギャグじゃん。勝てるわけないし」
投げ捨てたいけどそうもできない腹立ちから思わず毒づいたそのとき。
「あっ」
突然、小春は立ち止まった。
控え室に携帯電話を充電したまま忘れてきてしまったことを思い出して。
「マジで〜・・・」
またあのビルに戻らねばならない気の重さから、小春はため息をついた。
少なくともあの社長には見つからないようにしないとやっていられない。
「非常階段で上るかな・・・」
控え室は最上階とはいえ5階なのでどうということはない。
トレーニングとダイエットを兼ねてそうするのもいいだろう。
少なくともあの社長とまた顔を合わせるよりは。
そう考え、小春はビルの脇に設けられた鉄製の非常階段を使って上がることにした。
- 257 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 20:11:54.03 0
- 数分後、首尾よく携帯電話を回収した小春は、再び非常階段に立っていた。
もちろん今度は地上まで降りるために。
・・・にも関わらず、小春が逆に階段を上へと向かったのは、屋上から自分を呼ぶ声が聞こえた気がしたからだった。
「・・・誰?」
屋上に小さな人影を認めた小春はそう訊ねた。
傾いた西日が、小春の背後から相手を照らしているからよく顔は見えていたけれど敢えて。
「何言ってんの小春。わたしわたし」
弾むようにそう言うその声は紛れもない。
「田中・・・さん?」
「当ったりー」
そう言いながら近づいてきたその姿は、紛れもなく“仲間”の田中れいなだった。
「どうしたんですか?こんなところで」
「あ、うん、たまたま近くまで来たから一緒に帰ろうかと思ってさ」
「・・・なんで屋上にいたんですか?」
「え?いや・・・別に・・・えっと・・・高いところが好きだから?あはは・・・」
「そうでしたね。田中さん高いところ好きですもんね」
「うん。え?あ、そうそう。好きなんだよね高いところから下を見下ろすの」
「バカと煙は高いところが好きって言いますもんね」
「そうそ・・・・・・え?」
「で、あなた誰なんですか?」
いい加減バカバカしくなった小春は、単刀直入にそう訊ねた。
不毛な会話はすでにさっき飽きるほどにしてきたから。
「・・・え?誰って・・・田中じゃん。ほら、どっからどう見ても」
「あんた本物のバカ?見た目が一緒ならバレないとでも思ってんの?」
―本物のれいなも大概だが、目の前のコイツは輪をかけたバカだ。
小春は少し頭が痛くなった。
- 258 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 20:12:16.04 0
- 念写能力を持つ小春には、こういった見た目の騙しは通用しない。
脳内のスクリーンに映し出されるのは常に真実の姿であった。
しかし、これはそれ以前の話だ。
まずもってれいなが小春と一緒に帰るために待っているなんてこと自体がありえない。
れいなが小春のことを快く思っていないのは百も承知だ。
あんなにフレンドリーに近づいてくることもありえないし、小春がいつもと違う丁寧語で話しかけているのに突っ込みもしないし、何より喋り方がおかしい・・・ていうかめちゃくちゃ標準語で喋ってるし。
本気で騙せるとでも思っていたのだろうか。
「バカバカ言うなっ!クソッ!何で分かったんだ!」
・・・思っていたらしい。
「・・・説明する気にもならない。どうせバカには理解できないだろうし」
「バカって言うなって言ってるって言ってるだろ!・・・・・・ん?」
「・・・・・・・・・」
―もう帰りたい。
さっきの社長との会話の比ではないくらいの疲れを小春は感じていた。
「クソッ!作戦は失敗か」
「作戦?」
「仲間のフリをして他のやつらのところまで案内させる作戦だ」
「・・・立派な作戦の邪魔して悪かったね」
「失敗したからには殺すしかない」
「・・・!?」
バカは切り替えも早いから油断ができない。
そんなことを考えながら、小春は舌打ちした。
- 259 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 20:12:43.52 0
- 小春の能力は戦闘向きではない。
・・・いや、その言い方は正しくない。
戦闘自体には意外と使える。
特にこういった相手を欺く能力を有した敵と交わった際には。
だが、あくまでそれは攻撃する能力を有したものが側にいたときの話だ。
結局は小春の能力は補佐的なものでしかない。
武器も持たず、相手の能力も完全には明らかになっていない今、状況は決していいとは言えない。
「お前、ただ姿を真似るだけの能力だと思ってるだろ。ちゃんと身体能力もコピーできるんだからな!特殊能力までは真似できないけど」
・・・ありがとうわざわざ能力について詳しく教えてくれて。
脱力しつつそう感謝しながらも、小春の緊張は高まった。
本当にれいなの身体能力をコピーしているというのなら、まともにやりあっても絶対に勝てない。
“仲間”に加わる前の荒れていた時代、50人以上からなる不良グループをたった1人で叩き潰したという伝説は、多少大げさに伝わっているのだとしても。
口に出しこそしたことはないが、れいなの身体能力の高さには小春も一目置いていた。
「さんざんバカにしやがって」
そう言いながら、“れいな”がナイフを取り出す。
―これは本格的にヤバい。
反射的に、小春は自分も武器になるようなものを探した。
藁をもつかみたいその手に触れたもの。
それは・・・
- 260 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 20:13:08.30 0
- 「ヨーヨー・・・」
自嘲の笑みで口元が引きつる。
本当にこんなギャグのような事態が自分の身に訪れるなんて。
だが、ないよりはマシだ。
それに案外何とかなるかもしれない。
先手必勝とばかりに、小春はヨーヨーを胸の前に構えた後“れいな”に向かって投げつけた。
手元からチェーンが伸び、ヨーヨーが夕日に照らされた空間を切り裂く。
そしてそれは“れいな”ナイフを持つ“れいな”の手を捉え・・・などという都合のいいことは起こらず、簡単に避けられてしまった。
―相手が“道重さん”だったら当たったかもしれないのにな。
あっさり避けられた悔しさにそんなことを思っていると、“れいな”が嘲ったように言った。
「そんなものが当たると思ってたの?バカじゃない?」
バカにバカと言われる屈辱がこれほどだとは。
小春は悔しさに震えた。
だが、悔しがっている場合ではない。
このままではバカに殺されるという、死んでも死に切れない最期を迎えることになる。
そのとき。
「小春!大丈夫ね!?」
「・・・田中さん!?」
- 261 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 20:13:36.19 0
- 小春は“仲間”の声を聞いた。
今度こそは本物の田中れいなの声を。
・・・隣のビルの屋上から聞こえるその声を。
「あっ!こっちやなかったと!?」
「・・・バカばっかり」
小春は小さくつぶやいた。
あそこからでは助けはもう間に合わないだろう。
隣り合ったビルとはいえ、互いの距離は5mではきかない。
いくられいなでも跳び移ることは不可能に違いない。
れいなが5階分を駆け下りて駆け上がるよりも早く、“れいな”は小春を殺すだろう。
「本物が来たの!?マズイ。早いとこお前を殺して出直しだ」
ナイフを手に迫る“れいな”に対し、小春は本格的に恐怖を感じていた。
絶対的な死の恐怖。
反射的に再びヨーヨーを胸元に構える。
練習の成果があって、投げたヨーヨーは手元にちゃんと戻ってきていた。
こんなものが何の役にも立たないのは実証済みだ。
だけど、無抵抗で殺されるのを待つよりはずっとマシ。
そう思ったとき、本物のれいなの声が再び聞こえた。
「小春!投げるんやったらもっと振りかぶって投げんね!」
ああそうかと思った。
CM撮影のスタイルにこだわりすぎていたが、よく考えればこんな体勢で投げて威力が出るわけがない。
すぐ近くまで迫った“れいな”に対し、小春は野球のピッチャーのようなフォームでヨーヨーを投げつけた。
その瞬間・・・小春は自分の中で何かが覚醒するのを感じた。
- 262 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 20:13:57.92 0
- 「!?消え・・・ぼぶっ!」
余裕の表情で迫っていた“れいな”の顔に、ヨーヨーがクリーンヒットする。
「痛っ・・・ぐぅ・・・一体何が・・・?」
その様子を見て、小春はやっと理解した。
自分が今、無意識のうちに何をしたのかを。
いくら振りかぶって投げても、それだけならきっと“れいな”は簡単に避けただろう。
その動体視力と運動神経をもってすればそれは造作もなかったはずだ。
・・・だが、避ける対象が突然“見えなく”なったとしたら。
小春は数ミリ秒の単位で念写を繰り返し、ヨーヨーに「背景」を連続的に貼り付けた。
ヨーヨーの移動に合わせて変化する「背景」を。
それにより、ヨーヨーは消えたように見えた。
その驚きに硬直したところを見事にクリーンヒットしたわけだ。
そう。理解はした。
しかし自分にそこまでの能力があるとは思えなかった。
死に直面することで能力が限界まで引き出されたのだろうか。
しかし、そんなことをゆっくり考えているヒマはなさそうだった。
ナイフを手に、鼻や口から血を流しながら立ち上がる“れいな”の姿を見て小春は我に返った。
こんなおもちゃのヨーヨーでは結局一瞬の足止め程度にしかならない。
ほんの少し寿命が延びただけに過ぎない。
- 263 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 20:14:20.22 0
- 「クソッ・・・何をした?なんで消えたんだ?」
だが、こちらを睨みながら“れいな”がそう言ったとき、小春はあることを思いついた。
そして、今の自分にならできる気がした。
「太陽を背にして戦えっていうのは戦闘の常識よね。そんなことも知らないの?バカじゃない?」
「バカって言うな!・・・そうか、だから消えたように見えたのか!」
もはや夕日もほぼ落ちかけ、黄昏に近くなっている。
もはや惑わされるほどの光は放っていないにも関わらず、案の定“れいな”はそれをあっさり鵜呑みにした。
「ならお前の後ろに回り込めば・・・」
そう言いながら、“れいな”は小春の背後へと素早く移動した。
そこに“地面”があると信じて。
「えっ?」
一言を残し、“れいな”は落下していった。
落ちていく間に、それが何もない空間に小春が念写した“地面”を踏んだせいだと理解できただろうか。
―・・・できるわけがないだろうな。だってバカだもん。
どっと疲れて、小春はしゃがみ込んだ。
瞬間、ポンっと肩を叩かれて飛び上がる。
「なかなかやりよーやん」
そこにはついさっきまで隣のビルにいたはずのれいなの姿があった。
- 264 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 20:14:48.33 0
- 「ど、どうやって?瞬間移動?・・・じゃないよね?」
「んー?いや、ちょうどいいハシゴがあったけん」
そう言ってれいなが指差した先を見ると、そこにはビルとビルの間を渡す形で横たわる長いハシゴがあった。
「あれを・・・渡ったわけ?」
「れいなバランスには自信があるけんね。WiiFitでも好成績やったと」
「・・・あ、そう」
バカは本当に高いところが平気なんだな。
小春はそう思った。
「あ、そういえば田中さんは何でここにいるの?」
「・・・え?あ、うん、その、たまたま近くまで来よったから・・・寄ってみたいうか・・・」
小春が訝しげな顔をしたとき、辺りが一瞬明るくなった。
「あ、高橋さん」
「愛ちゃん・・・」
「小春、大丈夫だった・・・ってれいな?なんでここに?」
「あ、いやたまたま近くまで来よって・・・」
「まあその話は後で。とにかくここにいたらマズいから」
早口にそう言いながら、愛は思わず笑みを浮かべた。
その一瞬、2人の心が流れ込んできたから。
- 265 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 20:16:48.47 0
- 少し前、愛佳が襲撃される事件があって以来、皆はできるかぎり単独での行動は避けるようにしていた。
・・・マイペースな小春を除いて。
れいなはそんな小春が心配で様子を見に来ていたのだ。
今回が初めてではなく。
小春も、態度にこそ出さないもののれいなに感謝しているようだった。
さすがに自分が心配でわざわざ来ていたとまでは思っていないようだったが。
しかし、さすがの愛もまだこのときは知らなかった。
先ほど起こった奇跡のような共鳴のことを
れいなが無意識に使った能力「リゾナント」のことを・・・
- 266 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 20:17:59.25 0
- 以上です
自分でもガッカリな仕上がりです
ちなみに落ちた“れいな”がどうなったかは不明です
- 267 :名無し募集中。。。:2008/04/21(月) 20:21:15.77 0
- いいじゃないですかGJ
れいなの能力が地味に活きててイイ
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