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リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第3話
- 1 :名無し募集中。。。:2008/04/27(日) 22:29:06.99 0
- 前スレ
リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第2話
http://ex24.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1208587442/
まとめサイト
http://resonant.s336.xrea.com/cgi-bin/up/index.cgi
テンプレ>>2-11ぐらいまで
- 188 :名無し募集中。。。:2008/04/29(火) 02:16:41.79 0
- 目覚めの悪い朝だった。
光井愛佳は、たった今まで見ていた悪夢を思い出しながら額の汗を拭った。
いや、“悪夢”で片付けられるならばどうということはない。
このまま忘れてしまえばいいだけだから。
だが、愛佳にとってこれはただの“悪夢”として片付けられるものではなかった。
何故ならば、それはこれから起こるべき“未来”の出来事だったから。
- 189 :名無し募集中。。。:2008/04/29(火) 02:17:26.30 0
- プリコグニション―いわゆる予知能力。
愛佳に幼いときから備わっているそのチカラは、長らく愛佳本人を苦しめてきた。
苦しみのあまり死ぬことすら考えるほどに。
だから愛佳にとってこの能力は、憎むべきものでしかなかった。
だが、今は違う。
「明日を知ってるのはあなただけ。自分で変えるんだよ」
リーダー・高橋愛のその言葉が愛佳を救ってくれたから。
“視え”た未来から目を背けるのではなく、向き合うことで明日も・・・それに自分も変えてゆくことができるのだと知ることができたから。
そして・・・
「愛佳ちゃんのそのチカラ、能力。未来予知という個性」
忌むべき存在でしかなかった能力を“個性”と表現し、能力に振り回されないように優しく指導してくれたサブリーダー・新垣里沙のおかげで。
「こんな私でも誰かを救えますか?」
その問いに対し、愛はもちろんだと即答した。
だが、里沙のおかげで随分制御できるようになった今も、正直自分には自信がない。
本当にこんな私に誰かを救うことなんてできるのだろうか。
ふと自問する瞬間が訪れることもあった。
昔に比べれば、随分前向きな懊悩ではあったけれど。
- 190 :名無し募集中。。。:2008/04/29(火) 02:17:55.03 0
- そんな折に見た“悪夢”・・・いや、訪れうる“未来”。
それは自らの死のビジョンだった。
「自分が死ぬとこなんて見るもんちゃうなあ・・・」
小さくつぶやきながら、愛佳はゆっくりと体を起こした。
頭の芯がまだ少し重い。
崩れ落ちるビルの瓦礫に埋まり、血を流して倒れている自分の姿が脳裏によみがえる。
視界がブラックアウトしていくときの恐怖の感情と共に。
死がこれほどに怖ろしいものだと知っていれば、きっとかつての自分も死を考えることなどなかったに違いない。
しかし、全身に冷や汗をかいてはいたが、愛佳はこの“予知夢”を必要以上に怖れてはいなかった。
これは不可避の未来ではないのだから―と。
自分の行動によって“未来”が変わる経験を、愛佳は何度かしていた。
今回だって、あのビル―廃墟となった町外れの幽霊ビルだったように思う―に行きさえしなければ、そして“未来”の中でとった行動をとらなければ自分が死ぬことはない。
そこまで考えて、愛佳はふと思った。
自分が変えた“未来”は一体どこへ行くのだろうと。
既に変えてしまったかつての“未来”はどこに消えたのだろうと。
自分には“未来”を取捨選択することができるのだ・・・と改めて気付き、愛佳は自らがまがい物の神のように思えて少し気分が悪くなった。
「ほんま最悪の朝やわ・・・」
深くため息をつくと、愛佳は汗で濡れた体をシャワーで洗い流すべくゆっくりと立ち上がった。
- 191 :名無し募集中。。。:2008/04/29(火) 02:18:21.80 0
- 身の入らぬ授業を終え、愛佳は帰途についた。
今日は喫茶リゾナントへも少し足は向けづらい。
愛は勝手に心を読んだりはしないだろうが、きっと自分の様子の違いに気がつくだろう。
おそらく里沙ならばもっと確実に。
2人や他の仲間に要らぬ心配をかけたくはなかった。
郊外にある自宅に向かう電車の中、愛佳は今朝感じた疑問についてまた考えていた。
自らが選ばなかった“未来”はどこに行くのか。
いや、そもそも“未来”はいくつもあるものなのだろうか。
本当に自分なんかが勝手に“未来”を選んでもいいのだろうか。
窓の外を流れる景色のように、次々と頭の中を流れていく疑問。
その答えは出るはずもないまま、やがて電車は愛佳の降りる駅のホームにすべり込んだ。
手にしたカバンを持ち直し、ホームに片足を下ろした瞬間“それ”は来た。
すっかり慣れたその感覚の中、愛佳はいつものように“未来”を視た。
そして、今朝の恐怖とはまた違った種類の恐怖に凍りつく。
「新垣さん・・・!?」
慌てて携帯電話を取り出すが、充電が切れていたことを思い出して唇を噛む。
話し相手がいなかった以前の愛佳にとって、一応持ってはいたが携帯電話などはずっと無用の品だった。
そのときの癖が抜けず、充電を忘れてしまうことは今でもしばしばだった。
だが、このときほどそれを後悔したことはない。
プルルルルル・・・
そのとき、発車を知らせるベルがホームに鳴り響き、愛佳は反射的にたった今降りたばかりの電車に飛び乗った。
2つ先の駅・・・あの幽霊ビルの最寄り駅へと向かうために。
- 192 :名無し募集中。。。:2008/04/29(火) 02:18:51.79 0
- 「なんで新垣さんがあんなところに・・・?」
駅の改札をくぐり、記憶の中にある幽霊ビルへと向かって走りながら愛佳はつぶやいた。
さっき“視え”たビジョン。
それは里沙が幽霊ビルに入っていく映像だった。
愛佳が瓦礫の下敷きとなって死ぬ“悪夢”の中のあの幽霊ビルに。
あんなところにどんな用事があるのかは分からない。
だが、そのままにしておけば里沙が死んでしまうかもしれない。
あの幽霊ビルが崩れ落ちるのは間違いない“未来”なのだから。
自分が勝手に“未来”を変えてもいいのかは分からない。
だけど、この“未来”だけは絶対に変えなければならない。
やがて“見え”てきたビルは、愛佳の目には死神が手招きしているように映った。
当然だ。
自分があそこで死ぬ様子をはっきりと“視た”のだから。
「大丈夫や。最後の行動さえ間違えへんかったら・・・」
自分にそう言い聞かせながら、愛佳は死神の下へと飛び込んだ。
恐怖はもちろんあったが、不思議と迷いはなかった。
- 193 :名無し募集中。。。:2008/04/29(火) 02:19:27.00 0
- 廃墟に特有の臭気と肌寒さが包みこんでくる。
薄暗さに一瞬目が慣れず、愛佳は立ち止まって瞬きをした。
徐々に慣れ始めた目に映る死神の棲み処。
だが、その視界に里沙の姿はない。
それほど広くない1階部分をざっと見て回るが、まったく気配はない。
(もしかしたらまだ来てはらへんのかも・・・)
一瞬そう思った愛佳は、それをすぐに打ち消した。
(ちゃう。私の“視た”ビジョンでは、新垣さんがこのビルに入ったとき、まだこんなに日は傾いてへんかった)
急速に落ちてゆく太陽を確かめながら愛佳は確信した。
新垣さんはもうこのビルの中にいる。
愛佳の視線が中央にあるコンクリート製の階段に移る。
次の瞬間、愛佳は迷わず階段を駆け上がっていた。
- 194 :名無し募集中。。。:2008/04/29(火) 02:20:23.47 0
- 「来た・・・」
階下の物音を耳にした里沙は小さくつぶやいた。
新たな指令を伝えるからと突然呼び出されたこの廃墟のビル。
組織の誰が伝令役を務めるのかは聞かされていなかったが、誰が来ても気が重いことに変わりはない。
「・・・・・・?」
組織の人間が来たと緊張した里沙だったが、すぐに様子がおかしいことに気付いた。
ビルに入ってきた気配は1階を探し回っている。
組織の人間であれば、自分が最上階の5階にいるのはすでに承知のはず。
ではあれは何者・・・?
先ほどとは違う意味の緊張に体をこわばらせたとき、謎の気配が階段を駆け上がってくる音が聞こえた。
「新垣さん!おられたら返事をしてください!」
「・・・この声・・・愛佳!?どうして?」
それと同時に自分を呼ぶ聞き覚えのある声が廃墟に響き渡り、里沙は驚くとともに少しうろたえた。
どうして愛佳がここに?まさか予知?わたしが組織と会うことを?
いやそれはありえない。組織に関することは予知できないように暗示をかけてあるはず。
だけどだったらどうして?
思いがけない事態に一瞬混乱したが、里沙はすぐに我に返った。
どちらにしろこのままでは愛佳に見つかるのは時間の問題だ。
そのときに黙って待ち構えているのはあまりに不自然だ。
こちらからも声をかけなくては。
そう判断した里沙は、小さく息を吸い込んだ。
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