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リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第3話
- 1 :名無し募集中。。。:2008/04/27(日) 22:29:06.99 0
- 前スレ
リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第2話
http://ex24.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1208587442/
まとめサイト
http://resonant.s336.xrea.com/cgi-bin/up/index.cgi
テンプレ>>2-11ぐらいまで
- 750 :名無し募集中。。。:2008/05/03(土) 16:39:54.86 0
-
「もう、いやや!!離して、里沙ちゃん!!」
はい、わかりました、と、応じる訳にはいかない。
今離せば、もうこの身体を支える資格がなくなると、わかった。
ねぇ、愛ちゃん。
貴方は誰のどんな過去も包んだじゃない。
私の、この裏切りも。過去にしてくれたじゃない。
腕の中で暴れる愛ちゃんを抑えながら、私は先ほどまでこの場で起こったことを
再び思い返した。
- 751 :名無し募集中。。。:2008/05/03(土) 16:40:24.79 0
- 今日は珍しく敵襲が二度。
皆を返したところだったから、私と愛ちゃん、二人で出撃した。
田中っちも行くってうるさかったけど、敵の反応は少数で、少し負傷していたから、愛ちゃんがそれを許さなかった。
その程度の簡単な、任務。廃工場で5体程と対峙した。
「あああああっ!!!!!!!」
しかし愛ちゃんは、5体目の敵に、軽い術を食らった。
本当に、すぐに解けるような、あるいは、かからないような催眠術。
それなのに私がそれを倒して振り返ると、愛ちゃんは大粒の汗を流しながらもがき苦しんでいる。
「やっと、上手くいったよ。」
不意に、冷たい声色。―氷の魔女、ミティ―
愛ちゃんを裏切った、元・リゾナンター。罠だった、と気付いた時にはすでに遅かった。
「久しぶりじゃないの、ガキんちょ。
今度はそっちにつくんだってね?いろいろふらふらと忙しいよね、あんたも」
「あんたが、あんたが愛ちゃんを!?」
彼女の声など構っていられない。こんなに苦しむ愛ちゃんは初めて見た。
自分が闘いに向いた能力者とは到底いえない。でも、彼女との闘いは避けられない…
やらなきゃ…
- 752 :名無し募集中。。。:2008/05/03(土) 16:41:13.30 0
-
「よくもまあ、愛ちゃんはガキんちょのこと許せたもんだよね。」
美貴、そんけーするなー裏切り者を許すなんて あ、美貴も裏切り者なんだけどねー
「愛ちゃんに何をしたの?」
ケラケラと笑う魔女に私は走り出した。袖口から飛び出すピアノ線。
非力な私でも操れる、暗殺用の武器。
心の操作と同様、この程度の物質なら、私は操作できた。体でなく、脳で。
背後では、愛ちゃんの呻き声が聞こえる。でも焦っては、いけない。
「うんうん、ガキんちょ、強くなってるねー。感心感心。
真面目だったもんねーあんたって、むかしっから。」
私の渾身の攻撃網を彼女は事も無げに掻い潜る。
その様はまるで、ピアノ線の方が、彼女を避けるように、無駄がない。
- 753 :名無し募集中。。。:2008/05/03(土) 16:42:00.98 0
- 「んー。美貴のことばっか見てて良いの?」
あんたのお姫様、動かなくなってるよ?
天井を破壊して魔女の視界を一時的に遮り、愛ちゃんの元へ。
ミティ相手では、愛ちゃんを気にしながら闘えなかったことを私は悔やんだ。
愛ちゃんは、ピクリとも動かない。うそ、うそうそ…
慌てて頬に手を添えたが、思わず、手を離してしまった。
冷たい。尋常じゃなく、冷たい。
もう一度触れようとしたその手を、ミティに掴まれた。
「タイムアップだよ、ガキさん。今度は美貴が愛ちゃんと仲良くする番。」
地中から氷柱が伸び、私の体を天空に攫った。
ぐはっ…口から、赤いものが零れた。天井と柱に挟まれ、身動きが取れない。
ぐりぐりと押し付けられ、身体が軋む。
霞む視界の中、愛ちゃんの身体から、湯気が出ているのが見える。
「ガキさんはさー、愛ちゃんに許して貰ったわけじゃない?
じゃあ、さ、愛ちゃんに何があっても、許せるわけ?」
反論も出来ないほど、強く押される体。きりきりと柱を捻りながら、魔女は問い続ける。
「最後まで、仲間ごっこ続けれる?うん、時間だわ、ガキさん。楽しいショーのね。」
急に柱が砕かれ、私は床に叩きつけられた。
声に出せない痛み。それよりも、愛ちゃんは…どうなったのか。
- 754 :名無し募集中。。。:2008/05/03(土) 16:43:32.40 0
- 氷が割れたときに出た、霧の中、恐ろしく背筋を伸ばして立つ、愛ちゃんの後ろ姿が見える。
どういう、こと?術が…解けたの?
「愛ちゃんにね、魔法をかけたの。子どもの心を取り戻す魔法」
思い当たる節は、下級催眠術、幼時返り…
あの時のあれは、やはり催眠術だったのだ…
「なんで、あーし、ここにおるの?」
普段時折使うロリ声が、常時使われることに違和感を覚えた。
愛ちゃんは催眠術にかかりやすい体質だと、小春が笑いながら言っていたのを思い出す。
催眠術を解こうにも、体が動かない。私の力なら簡単に解けるはずなのに。痛みがそれを邪魔する
ミティはそんな私を一瞥すると、愛ちゃんの横に立った。
「お名前は?」
ミティの問いかけに答えた愛ちゃんの言葉に、私は頭の中が真っ白になった。
「あい。…あい、きゅーいちよん。おねーちゃんが新しい、けんきゅーいんさん?」
- 755 :名無し募集中。。。:2008/05/03(土) 16:44:08.86 0
-
7年前、何度も読み返した資料を思い出す。
資料と言っても、ほんの数行。
i914。22年前、研究班が作り出した、複合能力者。
4歳で謎の失踪を遂げた時、彼女の研究データのほとんどは消失したが、
唯一残った日誌にこう書かれていた。
『すべてが なくなった』
この7年間、綿密に調査したが、その言葉の意味はわからなかった。
闇雲に使うことを望まない、精神感応。
使用時に謎の付加を伴う、瞬間移動。
力は、これだけ。
孤独の意味を知る者で、誰にでも優しく、そして強かった。
i914。彼女からその名前は聞いたことがなかった。
名前自体を知ってはいた、ようだが。
7年間。私にとって、高橋愛は、高橋愛だった。
- 756 :名無し募集中。。。:2008/05/03(土) 16:45:52.66 0
-
「きょーは、なんにん?」
「何人出来る?」
「ん?なんにんでもいいよー」
いっぱいがいいかも。すぐおわっちゃうのつまんないしー
二人の会話で、自分が回想の世界から帰ってきた私。
愛ちゃん一体、何を言ってるの?
パチンとミティが指を鳴らすと、ぞろぞろと雑魚兵が踊り出てきた。その数ざっと、数百体。
「これだけで、いいの?」
「いいよ?今日は何が、食べたい?」
「うんとねー。いっちごー!!」
ぱーん!!!
愛ちゃんが手を振り上げた瞬間、彼ら全ての体に、無数の穴が開いた。
瞬きの暇すら与えず、手を振り下ろすと、兵士たちは消失していった。
愛ちゃんが、すべて、消した。
「よくできたね、i914。いちご、そこにあるから、食べておいで」
- 757 :名無し募集中。。。:2008/05/03(土) 16:46:22.27 0
-
「おどろいた?あれが、大量破壊兵器、i914だよ。」
兵器…その言葉に、震える。
「さすがに、ガキんちょも、怖くなったでしょ?
表情も変えず、一瞬でだよ?美貴にも出来ないなぁ」
やめて
「あれを、2歳くらいから毎日してたらしいよ。」
もうやめて
「もう、壊れちゃってるよね。兵器としては、最高なんだろうけど…」
「やめろ」
体中の骨が軋んだ。でも、心が体を動かした。
なんとか立ち上がり、叫ぶ。
- 758 :名無し募集中。。。:2008/05/03(土) 16:46:57.68 0
-
「愛ちゃんは、あんな子じゃない!!!兵器なんかじゃない!!」
愛ちゃんは、人間だ。誰よりも優しくて、傷つきやすい心を持った人間なんだ。
「何にもわかってないと、笑えるよね。ホントに。」
「あれは、高橋愛の、本当の姿。光を操り、すべてを光に返す、至高の能力。」
その言葉に、下級兵達の死に方が重なる。
愛ちゃんが、全部、消したの?
愛ちゃんは、たとえ敵でも無闇に傷つけたりしない…
その、愛ちゃんが一瞬で…無数の命を、消した…
「愛ちゃんは、あんな子じゃ…」
「その言葉自体が間違ってるってわからないの?」
- 759 :名無し募集中。。。:2008/05/03(土) 16:47:51.33 0
-
「あれは、高橋愛よ。人間に害を与える使用法を忘れていただけ」
ほら、空間移動。あれも対象を光の粒にして、光速で移動して、元に戻す力。同じ原理。
「データによると彼女の祖母は何かの能力者みたいね。
能力の制御は、その祖母の力によるところが大きいみたいだけど。」
一度覗いた、愛ちゃんの深層心理。
おばあちゃんの温かい手は、彼女がこんな風に力を暴走させないための封印術でもあったのか。
「わたしは、それを少しこじ開けただけ。あれは愛ちゃんなのよ。
あれを否定することは、彼女を否定することだわ…
ただ正義感だけ振りかざして…それが何を意味するか、わかってないんじゃない?」
私は、頭を殴られた気分になった。
私はなんて恐ろしい言葉を何度も口にしてしまったのか…
愛ちゃんは、私のありのままを受け入れてくれたのに…私は…私は…
- 760 :名無し募集中。。。:2008/05/03(土) 16:48:33.49 0
-
「i914!こいつも、片付けてくれる?」
「ん〜?」
体はいつも通りなのに、中身だけ幼児になってしまった愛ちゃんが、
いちごを口に咥えながら、とてとてと私の元に来た。
「このひともうしにそうだよ?やらなきゃ、だめー?」
「うん。その前に、このおねーちゃんに見覚えある?」
こうなってから、初めて眼を合わせる。いつもと変わらない、無邪気な笑み。
そうか、無邪気すぎるんだ。
ダークネスは罪の区別もつかない愛ちゃんを利用して、実験して。
「…しらない。」
その言葉と共に、愛ちゃんの手が、私の前に翳された。
恐怖に体が震えた。愛ちゃんにこんなことをさせることに。
私の命なんて、どうなったって構わない。
今、彼女が私の命を奪うことは、何時の日か、彼女が自分を責める条件となる。
そのことが、恐怖だった。
「じゃー、さよならするね。」
- 761 :名無し募集中。。。:2008/05/03(土) 16:49:51.46 0
-
―いややーいやや!!―
心の声が、流れ込んでくる。これは、テレパシー?
―あかん!!やめろ!―
今度は、もっとはっきりと聞こえ始めた。愛ちゃんが中でもがいているのだろうか。
「愛ちゃん…」
「あい…ちゃん?あーしはきゅーいちよん、までがおなまえやよー」
―里沙ちゃん!逃げて!―あーしを、その線で貫いて!早く!―
どうして、この人がこんなに苦しまなくちゃ、いけない?この人が、何をしたの?
「勘違いしちゃダメだよ、ガキんちょ。
その為に…こうやって人を殺す為に、i914は創られたんじゃん。さ、やって?」
「うん!」
…どしゅん
- 762 :名無し募集中。。。:2008/05/03(土) 16:50:42.70 0
-
愛ちゃんは、力を発動した。自分に向けて。
光の矢で、自身を貫いたのだ、左脇腹を強く深く。よろける身体を抱きとめる。
「下級催眠術じゃ、所詮この程度みたいだね。」
背後で、ミティの声がする。
「それとも、あんたたちお得意の共鳴?ガキんちょの生きたいって心が共鳴したの?」
高らかに笑って、彼女は告げた。
「今回は、あくまで、i914の力がどこまで利用できるかって実験。
まぁ、満足のいく数値だよ。次来る時は、もうちょっとこの状態が長く続くようにしないとね」
じゃ、また。そう言って消えるミティ。
その言葉に心底胸騒ぎがした。
でも、今、姿が見えなくなることは大きい。
ゆっくりと彼女を横たえると、さゆみんに連絡を取る為に愛ちゃんの懐を探った。
私の携帯は、粉々になってしまっていたから。
「…さちゃん、ごめん…ごめん…」
- 763 :名無し募集中。。。:2008/05/03(土) 16:51:24.62 0
-
「愛ちゃん、気がつい…」
愛ちゃんは、大粒の涙を零しながら、何度も呟いた。
もう、殺してや…こんなん、いやや…
「そんなわけにいかないでしょ!それに、皆に死ぬなって言ってきたのは、愛ちゃんじゃない!」
半ば、絶叫だった。理由を問われたら、何も答えられない。
愛ちゃんがそう思いたくなるのも、頷けるほどの、惨状。
自分の知らない、得体の知れない謎の力。謎の人格。謎の記憶。暴走。
そして、私の言葉。
二人でいるのに、今、愛ちゃんは独り。
皆を助けてきた、愛ちゃんはそこにいなかった。孤独に打ち震える、独りの少女だった。
皆の孤独は感応できても、自分の孤独は感応できない。
皆の孤独に共鳴できても、自分の孤独に共鳴できない。
傷口を刺激しないように、私は愛ちゃんを抱きしめた。
「離して!」「あーし、里沙ちゃんを消してまう!」「お前、離せって!!」
「大事なんやって、皆が…里沙ちゃんが…これが暴走したら…
あーし…また…みんなを…傷つける」
そうやって…愛ちゃんは、いつも、いつも…
- 764 :名無し募集中。。。:2008/05/03(土) 16:52:45.35 0
-
「愛ちゃんは、わかってない!」
愛ちゃんの抵抗が止む。反対に私は、腕の力を強めて、心で強く想った。
『愛ちゃんの力、怖くないわけじゃない。でも、愛ちゃんは愛ちゃんでしょ?
簡単に、死ぬなんて、言わないで。
方法は、きっとあるよ。皆も、私も、愛ちゃんの為ならなんでも出来る。
孤独に、負けないで。独りじゃないから みんなが、いるから』
「「ガキさん!!愛ちゃん!」」
その声に顔をあげると、田中っち、それにみんなが飛び込んできたのが見えた。
必死に想い続けたみたいで、愛ちゃんが気を失ったことに気付かなかった。
伝わった、だろうか…今、そのことを確かめる術が無い。
光井に、愛ちゃんの明日を視てもらわないと。
苦しむのは、仕方ない。
ただ、独りで苦しまないで欲しい。
愛ちゃん、どこにも行かないで。
- 765 :名無し募集中。。。:2008/05/03(土) 16:53:41.01 0
- * * * * *
「ただいま、帰りました。」
任務を終え、謁見の間で、主に、報告をする。
いくら、氷の魔女なんて呼ばれる私でも、この方を前にすれば、自然と頭を垂れた。
「i914、力は以前と全く変わりません。むしろ、今の身体の分、威力が増している模様でした。」
頭を下げているため表情は見えないが、主は喜んでいるように感じた。
闇を操り、人の心を読み、その心に孤独を作り出す、ダークネス。
我が主ながら、なんとも恐ろしい存在だと思う。だが、そこに惹かれる。この世の中は、力が全てだ。
『i914、必ず手にいれろ。
あれは最高傑作だ、私の遺伝子を引き継いだものの中で、な。』
今一度命を受け、退室した。
高橋愛はダークネスの血を受け継いでいる。
このことを知ったら、あいつらはどんな顔をするだろう。
おそらくこのカードで、高橋愛を引き入れることはできないまでも、
リゾナンターから身を引かせることが出来るだろう。彼女の自身の意思で。
その後、どうなろうが、知ったこっちゃない。
酷く、愉快な気分になりながら、私は闇に紛れた。
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